水泡

とある曲を聞いて頭に流れた景色を言葉にして綴る場所。

まちがいさがし『生活はその日のために』

四畳半なありきたりな空間に私は閉じ込められている。

正しくは身体毎ではなく、精神的にということ。
 
息をする為に、生きをする為に、何かを犠牲にしている。
 
生活を繰り返して
明日を待っている
今日を見送っている
昨日を惜しんでいる
 
時々全てを壊したくなるくらいの不安が押し寄せてくる。
心臓が爆発して、私は私でなくなることを望んでいたりもする。
 
私一人だけのものだったら、一生救われないんじゃないかなって。
幸せを知らないのは、私だけじゃないかなって。
 
明けない夜を掌に乗せたまま、変われない自分を毎日殺そうとしていて、
あの頃にこうしていれば とか
この頃欲しがっていたものが違えば とか
そういうこと嘘でも言ってはいけないと分かっていても、
自身が作り出した悪夢を毎日毎日繰り返し見続けている。
 
絶対覚めない夢はないけれど、
絶対叶う夢などこの世にはない。
 
理不尽に背負わされる罪も
不条理で罵られる事も
消えてしまいたいぐらいの失敗も
しなかったことへの後悔も
全部、消えないように
 
『続』

ヨルシカ『爆破魔』

どこにでもあるどこにでもない風景を照り返す、

嫌いになりそうなくらいの天気はちょっとだけ、

心を憂鬱にさせる。

 

窓に映る半透明な僕を見て、

『さよならだ、人類。みんな吹き飛んじまえ。』と

本物の僕が口を動かした。

 

"青春"という名にどれほどの価値があるのか、

当事者は何一つ知る由もない。

永遠に続くような、永久に約束されたような、1095日。

カウントダウンは全てを追い掛けてくる。

地球は徐々に傾きを変え、季節は彩りを操る。

 

囲われた箱の中で消えない夢を見ていたい。

数ばかり数え続けた大きな人達に否定されない夢を実感したい。

ずっと夢を見ていたい。

 

これは君の優しさが齎した"フクサヨウ"だ。

記憶の全てに君が居る。

 

見落とされる心も、

足掻いても、

嘆いても、

口だけの言葉にも満たない頑張りも、

投げ捨てたかった。

 

泣きも笑いも出来ないこの感情の行き場を

認められなかった、認めたく無かった。

 

"不完全な心を。"

 

だから、日々を壊したかった。

この日々を爆破したかった。

 

相も変わらず昇る月を睨み、

どこからか零れ落ちる雨を見落とし、

死んだ目で、

爆弾片手に街を眺めた。

 

何をしても振り向かなかった雑踏で、君だけは、振り返った。

 

痛みに気づいてくれた。

この感情に名前をつけてくれた。

僕を見つけてくれた。

 

本当はもっと笑いたかった。

本当はずっと戻りたかった。

 

でも、

もう、さよならだ。

だから、さよならだ。

 

君の優しさが辛い。

君の優しさが哀しい。

 

このままじゃ、君無しで生きれない。

 

今、ここで居なくなれ。

 

"青春"と名付けられた約束を僕は破る。

誰かとの約束を初めて破る。

 

そして、君を指差す。

最後どんな顔してたかな。

 

君が居なくなった世界が僕の全てだ。

 

あの百日紅は、まだ咲いているだろうか。

思い出を爆破した破片は、そこら中に落ちている。

 

結局黙っていなくなった君を忘れられないのは、僕のほうだった。

 

『さよならだ、吹き飛んじまえ。』

 

H△G『星見る頃を過ぎても』

「さよなら」という言葉は物語を終わらせない為に、神様が作り出した。
そして、これ以上にない意地悪な呪文の1つだった。
 
何度唱えてみても、そこに意味なんて存在していない。
ただの言葉であることは、年を重ねる毎に痛い程身に沁みて行く。
 
その度に、現実か夢か、どちらか思い出せないくらい曖昧な記憶をいつも思い出す。
心に君が無責任に放った優しさが未だに私に探し物をさせている。
永久に見つからないかもしれない、君の存在を。
 
星が見つからない夜は月がこちらを見下ろしていた。
はっきり見えていた居場所を少しずつ、見失い始めていたことにわたしは気づけなかった。
あの時、純粋に抱いていた感情は何の濁りもなく、真っすぐだったのに。
 
 
わたしときみは何年か前に出会っていた。
蟬が鳴り止まず、どこもかしこも蜉蝣が揺らいでいた暑いあの夏の日。
学校も長期休暇に突入し、家庭の事情でおばあちゃん家に帰省していたあの時に。
わたしは友達がいなくて、いつも縁側でひとりぼっちで退屈そうにしていた。
それを見かねたおばあちゃんが、向いのお家にわたしと同じくらいの子がいると言った。
田舎だったから近隣の付き合いは都会よりは親密で、仲が良くて、わたしを連れて挨拶をした。
機械が作り出す冷気が漏れるあのちょっと懐かしさを覚える玄関先で。
第一印象はこれといって無かったけど、きみはとても笑うのが似合う子だと思った。
 
わたしはとても人見知りだったが、きみがいつも手を引いて、どこかへ連れ出してくれた。
 
我侭を言えないと自分を封じ込めて、らしくあることを演じることで少しずつひとりを覚えていたわたしに、知らないことをたくさん教えてくれた。
優しさ、強さ、傷つくことへの痛み、約束の仕方、ひとりじゃできない事を、たくさん。
 
好き、という感情はそのときは知らなかった。
好き、という意味をそのときは知らなかった。
何かに色をつける作業の一種で、ただの言葉でしかないと思っていた。
そこに想いが伴うことは、知らなかった。
でもちょっとずつ心の自由は無くなっていたのは、確かだった。
 
心の自由と違和感は比例して、徐々にわたしを蝕んでいた。
それに気づかないフリをして、きみとこのままでいたいと思った。
 
きみのおばあちゃん家で、一緒に花火をしたこともあったかな。
名も知らない星を眺めて、知っている名前を羅列したりして、お互いちょっとだけ見栄を張りたかっただけなのかもしれない。
 
でもきみといるとなんだかいつもよりも明るい夜のような気がした。
星が見えなくたって、雲で月が隠れていたって。
 
沢山のことを、沢山の日を過ごすうちにだんだんわたしはきみに心を開くようになった。
着々と過ぎ行く夏休み、お盆がやってきた。
いつまできみとここにいられるんだろうか。
永遠のように続くような夏休みをわたしは心のどこかで無意識に願っていた。
それは叶わずに、見失ってしまったけど。
 
いつまで経っても忘れられない、思い出の切れ端を握り締めて、わたしは今日も変わらず探している。
あの夏の匂い、アスファルトが照り返す暑さも、一緒に越せなかった冬の景色にも、きみの陰をいつでも探している。
 
名前も知らなかった星を見上げて、今ならどれも知っているのに、もう見えない。
迷いのない目で見上げていられたのに、全てが霞んで何も見えなくなった。
 
それなのに、繰り返すあの記憶は再生される。
それが最期だとは、誰も知らずに。
 
きみとわたしは同じ場所にお墓参りに向かうことになった。
わたしはオバケの類いが苦手で、きみの手を握りしめ、背中にくっついてずっと歩いていた。
 
するときみは、笑顔でこちらに振り返り、こう口にした。
 
「お墓ってね、僕たちのご先祖様が此所にいるんだよ。
だからね、ずっと僕たちのこと見守っててくれるの。
守ってくれるの。怖く無いよ。
おばあちゃんのおかあさんもおとうさんも、そのまたおかあさん、おとうさんがいるってことだから。みんな大切なひとたちだよ。
ね?こわくないでしょ?」
 
それを聞いてわたしは、きみの背中から離れて、その場所を自分の目でしっかりと眺め
「それってほんとうなの?」
と疑いつつも、次の言葉を待った。
 
そして、少年は自信満々の表情で、
「ほんとうだよ」
と答えた。
 
それはたわいもない会話だったのかもしれないけれど、ずっと忘れられずにいる。
 
「さよなら」も言えず
 
優しさも寂しさも悲しみもあのしぐさも笑顔も泣き顔も
 
その秋も
その冬も
つぎの春も
つぎの夏も
探した
 
失くした
見つけた
迷った
 
その時、初めて知った。
 
永遠なんてないことを。
 
『終』

あめのむらくもP『エリカ』

終電という名の、今日に区切りをつける電車に乗り過ごさないように、がむしゃらに走った。

ホームに鳴り響く、警告音と人々が発する騒音に紛れ込んで。
息を切らして、滑り込んだ車内で整える。
暗闇越しに映る自分自身を眺めながら、いつか何年も前に知った虚しさが再生される。
 
「いずれは何もかも、ふとした瞬間に消えてしまうのに。
どうして人は今日と変わらぬと約束されると日々を仮定し、無下にして明日を創り上げるんだろう。」
何回も何十回も考えても答えは一度として出た事は、ない。
 
この地に生を授かって僕は何年息を続けてきたのか、数としては認識できるのに、事実として、受け止めることはきっと、ずっと出来ない。
その間にそれなりの知識を携えたはずなのに、わからない事、物は日に日に増えていった。
小さい世界から大海原に放たれて溺れそうになるくらい、社会に沢山の何かが溢れかえりすぎた。
 
求めても、求めても、答えは出ないし、教えてもらえないこともわかっている。
だけどこの日に、毎日に意味が欲しい。
じゃないと、僕は僕であることすらも肯定出来なくて、いつしか全てを忘れてしまう。
 
抱えているものを少しずつ落として、拾ってくれる誰かを待っている。
でもそんな人は居なかった。
歩いた印だけがそこに残って、薄っぺらい記憶だけが脳を通り過ぎた。
 
そこで流れる景色が途切れて、扉が開く。
僕の思考もそこで、一旦中断。
 
流れに沿って歩く。
どこへ向かうのか、目的も知らない人と流されるまま、出口へと向かう。
 
繰り返すこんな毎日に他人は満足しているのだろうか。
俯く人の群れに笑顔や光など、1mmも感じとることが出来ない。
 
結局みんな何かが足りていない。欠落している。
アレが欲しい、コレも欲しいと集めてみても、満たされたのはその瞬間だけ。
経過が進むと、また心のどっかで何かを求めて寂しくなる。
じゃあ、何で埋まるんだろう?何で満ちるんだろう?
 
SNSで幸せそうな顔して映る写真も、それを眺める側の劣等感も、両者が正しい。
僕はこんな風にはなれないと、それでも私は満ち足りないと、いう感情も。
 
福利厚生が充実した会社で、上司も同僚も優しくて、休日は趣味に時間を割いて。
幸せじゃない訳じゃない、きっと。
それなのに何故だか物足りなくて、今日を終えることを怖がっている。
明日が僕を迎えにくることを恐れている。
だから今夜も眠れなくて困っている。
 
そんな僕を見透かしたように、風が吹かない窓辺で揺れるエリカ。
 
 
今、僕の足が向く方向は正しいのか、そう思ってしまう。
太陽が昇る前にの冷たい空気の中で、迷った。
 
集団行動という何かを植え付けられ、誰か同じであること、それが正しいと枠に填められて教育されてきた。個性が足りないと言われ、個性を欲しがる同じ個性にまた君も埋もれて。
本当の「個性」を知っていると、人一倍孤独も育って行く。
理解されたい近づきたいと思えど、誰にも触れられず、遠くから同じようなフリだけをして生きてきた。
 
それでも誰かのことを好いてしまうこともあったらしい。
感情は人並みにあった。
でもその隙間を埋めたくて発したかった声は、交わせない言葉の多さ故に掻き消された。
大丈夫と、心の奥で自分自身を守って、広げた手も、何にも触れられなかった。
 
結局、何かじゃなくて、誰かが足りなかった。
心のどこかが侘しいのは、一人でいる自分に対してだった。
何時見つかるんだろう、何処に居るんだろう。
僕を、満たしてくれる、誰か、は。
 
独りじゃ満ち足りないのはそれだけで、大切なものは沢山ある。
だから幸せじゃない訳ではない。
でもそれだけじゃ生きてはいけないと知っている。
だから、今夜も眠れなくて参っているよ。
 
そこに前からいたような存在感で、咲いているエリカ。
 
 
何が足りないか気づいたが、満たす方法を知らなかった。
だからもっと増やした。好きなアレもコレも、集めてみた。
でもやっぱり心のどっかが寂しい。
何で埋まるの?何で満ちるの?
そうでなければいいと、希望を込めて僕は問うた。
 
結局、僕らは悲しい。
何故だかわからないけど、何かが悲しい。
それでも僕らは隠して笑わなければならない。
その隙間をこれで埋める、これで満たすの。
 
だから一人になりたくないと願う。
それだけがある決意をしたこの日の邪魔をする。
お願いだから消えて欲しい。
それすらもまた悩みの種になって、今夜も眠れなくて、参っている。
 
まだ静かにそこで咲いているのは、エリカ。

 

『終』

あめのむらくもP『他人事の音がする』

幼い頃君に教えられた「優しさ」という約束を守っているだけ。
そう言って僕は本当の思いを包み隠して、また誰かを救っているフリをして偽善者になりたがった。本物の救いなんて差し出すことなんてせずに、中途半端に。
 
すれ違う沢山の出来事を見てみぬフリをして傍観者にも、加害者寄りの人になりたくなかった。
だからいつも問いかけられる言葉に「知らない、知らないから。」と言い放った。
どんな人も愛する能力も、本気でぶつかることさえもしたくなくて。
誰かは誰かのままで、通り過ぎて消えて行く。
お互いどこの誰かで、どこへ消えて行くかも知らないままで。
 
今もずっと聞いた事のある音が鳴り響いている。
それすらも、いつか僕らはきっと忘れてしまうから。
両手に抱えている思い出と一緒に。
 
悲しみを初めて目の前に現れた。見えた。
これがそうだと、知った。
なのに僕は涙が流せなかった。
不甲斐ないというのは、これかと初めて知った。
 
正しさは正義なのはわかっている。
だから傷つけたりはしない。
脳では煩い程聞こえるのに、わかっているのに。
感情を失ったみたいに冷たいこの掌は、正義を選び損ねて生きる。
 
君とすれ違う一瞬に、心の奥が覗けるのなら嘘などつかなかった。
「要らない、要らないよ、そんなもの。」と、強がりで僕を守った。
でも君はいつも通りの表情で笑ってた、いた。
 
重ねる時は時間に飲まれて酸化し、思い出は錆つく。
大事な思い出程、容易く崩れ落ちて、朽ち果てる。
悪いモノ程、心の居場所を取る。
 
今もずっと聞いた事のある音が鳴り響いている。
それすらも、いつか僕らはきっと忘れてしまうから。
両手に抱えている思い出と一緒に。
 
ずっと避けて来た触れ合った先に待ち合わせているさようならがそこに見えた。
なのに僕は悲しいと思わなくて、言葉にならない思いも、行動にも感情にも現れなかった。
だから申し訳程度に自分の中に埋もれている言葉を掘り起こして、綺麗に頭の中で整列させた。
そしてロボットのような片言で吐き出す。笑った。
ああ、どうして本物を知った時でさえも僕はこんなにも下手糞なんだろう。
不甲斐ないと、心底僕は僕を恨んだ。
知らぬ間に手に食い込む爪の後が、その痛みが、本当の僕だ。
 
永遠の合図のようにいつも鳴り響く音。
この音も僕らが大人と呼ばれる年に頃、いつかきっと忘れてしまうんだろう。
自分自身のことでいっぱいいっぱいで。
 
時々、沢山の人がいる場所で孤独を感じる。
そう今、この箱の中にいる時、友人と呼ばれる人間と言葉を交わしている時でさえも。
何一つとして共有出来ないんだ。
 
例えば、他人が喜びを表現している瞬間に出くわすとそれが本物か確かめようとする僕がいる。
感情が溢れ出して泣いても、笑っていても、もしくは怒っていても、何も感じない。
こういうときは心が震えるんだろうけど、自分のことさえもそう。
いつからこんなに不器用になってしまったのか、自己表現も感情に対しても。
 

膝を抱えて呟いてみた。

「不甲斐ない僕はどうあればいい?
どうなればいい?
優しくありたいのは誰の為?」
 
応えが出ない自己嫌悪を今日も繰り返して、暮れる。
もう夕暮れが終わりを告げて、夜がこっちに歩いてきた。
 
『終』

popoq『flower』

人は与えられた道をひたすら歩く。

保育園または幼稚園、小学、中学、高校、大学、社会人へと。
早い段階でいつしか気づいたことがある。
僕は周りの他人(ひと)よりも「不出来」だということ。
それに気づいてからは何故だろう、いつしか同じ夢を繰り返し見るようになった。
夢から覚めればいつもと変わらない日常が待っているのに、抜け出せずにいる。
誰かに囚われているのか、魅せられているのかわからずにいる。
これは毒されているというのが正しいのだろうか、幼い頃からそこでしか会えないあなたを探し続けている。時だけが過ぎ、この年になっても未だに。
もう一度、もう一度だけ、夢の中で待ち合わせしよう。あの白樺の下で、ずっと僕は待っている。もう何年も、そこで。
 
手がかじかんで震える夜空の下で、居場所を忘れた瞳で追い掛ける。
煙草を口に含み、吐息に混ざって消えて行くその姿を。
これだけ待ってもあなたは現れてくれるはずなんてなくて、もうそろそろ僕の相手をしてくれるために、今日ここに来てくれてもいいんじゃないかな、なんて馬鹿らしい。
あれからどれくらいの時が経ったのだろうか。
日常の中で思い出されて、何かに縛られて、全てが薄まる眠りの時でさえ、深まる謎の記憶を、次はどうやって忘れさせようか。
 
でも僕はどうやっても、この毒された脳からは逃れられないんだろうな。
だって幼い頃出会ったあなたにまた会いたいと思っている。
 
だから、ずっとあの丘の上で、あの白樺の下で、待っているよ。
 
あなたと出会ってから数えきれない程の年月の間、生まれた空白をどうやって埋め尽くそうか?
僕はあの光景をずっと忘れずに、覚えている。
 
あれから君は変わった?
毒されているのは僕の方だけなのか?
 
ねえ、今の君はどうだい?

電ポルP『曖昧劣情Lovers』

こんなにも憂鬱な気分になる乾いた恋心はどこかに隠していたい。
でも本当はどうしようもなくて、自分でもコントロールなんて出来なくて。
誰かに気に入られるように振る舞うのは嫌いなんだけど、すごく嫌いなんだけど、どうしてもあんたに好かれたくて、私は上手に演じようとしている。あんたが好きそうな女の子を。
 

叶うんだったら、今すぐにその指先に触れたい。

でも実際はそんなこと出来る場所にも立場にも居なくて、虚しくなる。
考えるだけで、辛くなる、苦しくも、もどかしくもなるの。
夢ならそれが叶うから、笑顔で居られるのにね。
 
たぶんあんたに「好き」と伝えても、きっと優しく笑ってはぐらかすだろうね。
「でもね、けどさ」って言いながら、私の気持ちなんてどうでも良くてさ、自分が誰かに好かれているっていう優越感に浸って何度も、何人にも繰り返しているんでしょ?
思わせぶりな態度で遊んでてさ、ずるいよ、どうせまだ好きだってわかっているくせに。
 
どんなことをされてもいつもあんたを許してしまう。
でっかくて、やっかいで、どうしようもない、あの病にかかってしまった。
「好き、好きなの、愛してるから」なんて千回唱えたって、何も伝わってないんだろうな。
言葉なんて嘘みたいな、全てを0にしてしまう効果のない魔法みたいだよ。
いつかかるんだろうね、あんたはこの魔法に。あんたじゃだめなのかな。
 
本当のことは隠しきれないんだね、泳いだその目を見逃したりなんてしないよ。
あんたの言葉で今すぐ私のことを満たして欲しい。
ねえ、いつもの曖昧な言葉だっていいから、お願い。
 
すぐに呼び止めたいよ、出来るのなら。
他の誰も居ない空間であんたを独りじめして、こんな作り上げた私じゃなくて、本当の素の私で、素直な私で、そこに居たいよ。
夢だったら全部消えちゃうから、嘘なんて少しもつかなくていいのにね。
 
あんたは相変わらず何も知らないで、当然のように優しく笑う。
私が何も知らないような、いつも通りの態度に心が乱されて、でもそれが心にくる。
 
私はいつもあんたのことばっかり考えてて、どうやったらこっちを向いてくれるのか、どうしたら私を好きになってくれるのか、気にしてくれるのかなんて悩んだりしているのに、あんたは変わらないね。やっぱりどうにも出来ないみたいだね。
「好き、やっぱり好きなの、愛してる」って何回唱えたって、叶わない。
馬鹿みたいな、この魔法。
 
感情、愛情、その他諸々を私は知らなかったって決め込む。
あんたのこと好きじゃなかった、好きにならなかった、気のせいだったって決め込む苦労、そういうのわかる?わかんないでしょ?だって知らないでしょ、私がどうやって好きになって、どのくらい好きで、どうしようもなく大好きで。
でもね、それが良いって、振り向かないあんたが、思わせぶりな態度で遊んでくれるだけで思ってしまう。やっぱりずるい、ずるいね。
 
何をされたっていつもあんたを許してしまう。
でっかくて、やっかいで、どうしようもないこの病は続く。
「好き、好きなの、愛してる」って千回唱えても、何回唱えても、きっと少しも届かず終わってしまう馬鹿みたいだって何年も時間をかけて気づく、どうしようもない恋だった、と。