水泡

とある曲を聞いて頭に流れた景色を言葉にして綴る場所。

BIGMAMA『the cookies crumbles』

 「人生ってこんなものでしょう?」彼女はそう言ってプール中へ飛び込んだ。頭が可笑しい人だと思った。真夜中に仲良くも無い、話したこともない僕を呼び出して急にプールに飛び込むなんて。彼女は少し変わった人で有名だった。いつも学校では一人だったけれど、独りではなかった。孤独なんて知らないような顔をしていた。

 彼女曰く、僕は「ロボットみたい」。誰かを敵に回すことを怖がり、好きでもない人間に気に入られようと愛想を振りまいている姿がそう見える、と。いつ切れるかわからない糸に必死に掴まって、それを誰かに切られても切られてないようなフリをする。それが私は気に入らない。嘘ばっかりで固めたその仮面そろそろ外そうよ、私は切れない糸を掴んでここで待っているから。それはある意味僕にとって新しい挑戦状だった。

 他人が僕のことをどういう風に思っているかが不安だった。知りたかった。だけど皆はその本当の応えを教えてはくれない。その度に愛されたくて自分を売って、どうしようもなく溢れ出してくる孤独を埋めるためにお互いを利用している。その度僕は都合のいい人間と認識され、嫌なことも段々断れなくなっていた。毎日、毎日僕の背中は重みを増していった。それを彼女は何故だかよく知っていた。

 

「終」