水泡

とある曲を聞いて頭に流れた景色を言葉にして綴る場所。

赤い公園『サイダー』

 陽炎がゆらゆらするあの夏の暑い日。いつも通り履き古した白いシューズを履き、チャイムと共に体育館へ向かった。今日は夏休み前の終業式だ。校長先生の長い話に皆早く終わらないかなと、どの行列も退屈そうだった。私より少し高い身長の君は私の斜め後ろ。たまに君の列の子が休むから、私は君にばれないようにいつも横目で探しては、目が合いそうになれば逸らす。

 終業式が終わり喉が渇いていた私は友達と一緒に自販機へと向かった。君は休憩時間にサイダーを飲んでいることを知っている。そのせいか好きでも無いサイダーをつい買ってしまう。ざらついた舌に程よい甘さが染みる。君はきっと私の行動を見て私の気持ちを知っているんじゃないかって、バレバレじゃないかって思ったりもする。君がここにサイダーを買いに来る前に立ち去らなきゃ。そんな時君はやってきた。やっぱり君の手にはサイダー。こっちを向くなと願っていたが、私の持っているサイダーに気づいた。思わず走って逃げ出してしまった。

 世の中は夏休みだというのに、補修で学校に向かう私はついていない。太陽がこんなに眩しいのはきっと今が夏だからだろう。学校に着き、補修が始まり、遅れて入って来た君。私のクラスにはもう一人補修を受ける人がいて、空いていた隣の席に君が座った。つまり私と君の二人。おはようと声をかけられ心踊ったが、平常心、平常心。たった一時間の為に三十分かけてくるのは辛いなと思いながら、学校を後にしようとした。すると君は窓からまた明日と手を振りながら声をかけてきた。私である確証はなかったから見えないフリをした。

 帰り道、カラカラになった喉を潤そうと自販機にお金を入れたところだった。誰かにサイダーを買われてしまった。怒って振り向いた先には君がいた。さっき窓からまた明日と言った後に、一緒に帰ろうと言っていたそうだ。聞こえなかったのかと思い、私をここまで追いかけてきたそうだ。

 はい、いつもサイダー買ってるから今日もこれかなって思って、と悪気もなく差し出す君。どうして知ってるの?もう私の気持ちに勘づいてるの?バレバレだったよって言われる前に、今言わなきゃ。どうしたの?違った?って焦っている君に、届くかな、届けなきゃ。

 サイダーで大丈夫だったよ。本当は私サイダーそこまで好きじゃないんだけど、ついつい買っちゃうんだよね。と缶を開けて一口飲んだ。やっぱりざらついた舌に程よい甘さが染みる。乾いた胸にその甘さが刺さる。

「あのね、私がいつもサイダーを買ってるのは・・・・」