uguis「24時間の幸福」
朝が迎えに来て、外が明るい。
窓辺には朝日の光が差し込み、時が過ぎることも忘れてただその空間にずっと居た。
その時このまま二人だけの時間が止まればいいなって思っていたのは、きっと僕だけだっただろう。
他人が僕が今考えていること、頭の中を覗く事なんて出来なくて、知る訳も無くて。
それが目の前で無邪気に笑っている君もそうなんだって思う度に、僕は苦しくなる。
君は今も変わらず、あの人のモノでしょ?
もしかしたら他の誰かかもしれないけど、僕のモノにはきっとならない。
ずっと前から他の誰よりもこんなに近くに居て、長い時を共に過ごしてきた。だけどこんなにも簡単に触れられそうで、触れられない距離にいる僕は、君には届かない。
僕が思わず差し出した手に君が気づいたら、何の冗談を言えばいいのかな。きっと君の目を見ることは出来そうに無い。だってここにある物語の続きを読み進めていくと、君の隣にいるのは僕じゃないってこと、誰よりも僕が知っていたから。
そんなことも知らず、君は何も無かったかのような顔をしていつも通りふざけあった。
あの物語は夢だったんだ、ってそう思い込みたかった。
でもどう足掻いたって、君の傍にはいつもあの人が居て、君との会話の中にあの人が現れて、君はそれを笑顔で、嬉しそうに話す。その度にどうして僕じゃ駄目なの?って怖くて聞けなかった。
その日のことは何も覚えていなくて、気づけば眠りについていた。
開けっ放しにした窓から、明け方のやたら冷たくてどこか濁った街の空気が風に釣られて僕の部屋へとやって来た。そのせいで目が覚めて、ああ、僕の隣に君は居なくて、君の隣で眠るのは僕じゃないと実感した。
あの人と別れても、気づけばまた違う誰かが傍に居て、やっぱり君は今も誰かのモノだったんだね?
君との関係は変わらず友達のままで、本音を隠さずにさらけ出してくれるくらい僕に心の隙を見せてくれているのに、それくらい近いのに、手を伸ばし続けて、いつまで経っても相変わらず届かないみたいだね。
君の物語の最期まで僕は読んでしまって、結末も知っている。だからごめん、君と話す時はいつも逃げるみたいに目を背けて。許して欲しい。
だって「君の物語の最後に僕はいないから」
『終』