水泡

とある曲を聞いて頭に流れた景色を言葉にして綴る場所。

須田景凪│バルーン『雨とペトラ』

いつか空は灰のように脆くなって、この地に落ちるって誰かが言っていた。

僕は退屈に染まったいつもと同じこの街に立ち止まったままどこへも行けない。
それに何か反抗したくて日々を妄想に費やして何とか遣り過ごしている。
そうやって何かに対して期待も希望もせずに境界線を引いてしまうのをあの人との共通の感覚で居られるような気がしているからだろうか。
でも何処かであの人が見れなかったこの先の景色が少しだけ見たいと思っているはずなのに。
あの時枯れてしまった色に染まった瞳すらも愛しくなるのかな。
僕が今、目を瞑ってしまったら雨が降ったら駆け出すのにも気づかず、きっとあの頬を濡らして、あの姿ももっと遠く霞んでしまう。
段々煩くなる雨の音に哀しみを重ねてしまう前に、その顔を堪える前に、笑い飛ばしてくれよ。
 
いつかため息は夜に化けて、唄を歌うと嘘みたいなこと誰かが言っていた。
僕を誘導する嘘を包んだ優しさをなぞったせいで、本当は大事だった人達が離れて行く声に気づく事が出来ない。
あるはずだった場所にそれは無くなって、辺りは静かに悲しみに揺れていた。
夜が地上に落ちてそれを朝が捕まえにきたら、きっと今日という日の僕を責め立てるんだろうな。
夢ばかり見続けて、何一つ変わらぬ日々のそこで見たらされないまま、ずっと。
見たく無いと逸らしてきた過去と不安ばかりの未来。
ずっと後悔と哀しみの隙間に挟まって、取り残されてしまう前に手を伸ばしてあげなきゃ。
 
雨が降ったら、きっと。
また雨が降ったら、もっと。
 
降り止まない雨に濡れながら湿るアスファルトを背中に映すみたいに、俯いていた。
「明日は何か変われば良いな」なんて独りぼっちで呟いて。
 
あの時枯れてしまった色に染まった瞳すらも愛しくなるのかな。
僕が今、目を瞑ってしまったらあの人は傘も持たず駆け出すだろう。
そして雨が降ったらきっとあの頬を濡らして、あの姿がもっと遠く霞んでしまう。
段々煩くなる雨の音に哀しみを重ねてしまう前に、その顔を誤摩化す前に、笑い飛ばしてくれよ。